電子書籍は自分のものにならない!?電子書籍の欠陥と紙の本の重要性について考察してみた!

電子書籍と言えば、本好きには本棚を圧縮出来て部屋がすっきりできるとともに、書店に行くことも無く手軽に読むことが出来る便利ツール。しかしながらその約款を見ていくと手元に残らないことが判明してきた。今回は10社程度の約款を調べてみた結果を報告していこう。

 

電子書籍は「閲覧権」を付与されるだけ!

結論から言ってしまおう。すべてではないが今回調べた範囲では概ね電子書籍は「閲覧権」を付与(ライセンス提供)しているだけで、サービスの終了、会員の解約などで一気に読めなくなる。すなわち、何千冊も購入したつもりでも、自分以外の要因により購入した(と思っていた)本が読めなくなってしまうのだ。10年後なんかに、ふとしたタイミングで読みたくなっても二度と読めない状況になることだって想定されるわけだ。

今回、約款を確認したのは以下のサイトとなる。12件中9件が「閲覧権」のみとなりサービス終了や退会で購入した書籍は一切見れなくなる。すなわち手元には「何も残らない」サービスだ。本記事では電子書籍の危うさを各サービスの利用規約や約款などから紐解いて確認していく。

  1. Kindle(Amazon)
  2. BookLive
  3. eBookJapan(Yahoo)
  4. まんが王国
  5. Amebaマンガ
  6. dブック
  7. U-NEXT
  8. FOD
  9. ひかりTVブック
  10. kobo(楽天)
  11. マンガ図書館Z
  12. Renta!

それでは、各サービスの約款を見つつどのような状態となるかを確認していこう。なお、色々と確認はしているが抜けがあったり解釈が異なる部分もあるだろうが、そのように読めた、という点で一つの解釈として見て頂ければ幸いだ。

 

Kindle(Amazon)

こちらの約款は、URL「AMAZON KINDLEストア利用規約 – Amazonカスタマーサービス」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

約款を読み進めていくと「1. Kindleコンテンツ」の部分にある赤い下線の部分にある「非独占的な使用権が付与されます」という点がポイントだ。その後に「販売されるものではありません」とあり、所有権は存在していないものと読める。ゆえに、Kindleで買った本は「Kindleで閲覧可能だよ、会員のうちはね」って状況になる。

しかも厄介なのは私的複製等も制限している点だろう。使用権だけなので複製などもってのほか、という事だろうか。

 

BookLive

こちらの約款は、URL「利用規約 – 漫画・無料試し読みなら、電子書籍ストア ブックライブ (booklive.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

第9条(サービスの利用料及び利用方法)の2項にある「該当コンテンツを閲覧することが出来ます」とあり閲覧のみを許諾していると読める。また第17条(著作権、商法等の私的利用限定)の4項に「ダウンロードされた権利は著作権者が会員及び利用者に譲渡するものではありません」となっており、BookLiveもKindle同様閲覧のみで所有権は一切ないと読める。

さらに厄介なのが、私的複製の禁止だ。第19項(禁止事項)の1項のviii号、ix号にある通り複製(保存)が出来ない。また第9条に戻るが第9条の4項、5項には購入コンテンツが見れなくなっても責任は負わないとの記載になっており、突然の閲覧不可の可能性を十分に残している。

 

eBookJapan(Yahoo)

こちらの約款は、URL「内容・動作環境・注意事項-ebookjapan- (yahoo.co.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。こちらは注意事項の個所に記載を確認した。利用規約などの約款の形ではなかったが文章を確認していく。

正直なところ約款と判断するか迷うところがあるが、注意事項の上部の赤い下線がある2行の部分には「転載し、複製し、出版し、放送し、公衆送信するなど、その方法のいかんを問わす自ら利用してはならず、および第三者に利用させてはならないものとする」から、複製等の保存ができない点、保存ができないという事は電子的には所有が出来ないと同義と判断できるだろう。

また、注意事項の中央のある赤い下線が4行続く部分にある「ヤフー株式会社またはサービス提供者は利用者に対して事前に通知することなく直ちに本サービスのご利用を停止する措置を行ったり」とあり、会員としての利用権限の有無は個人にない点がある。また、下部の赤い下線2行の部分には「やむをえない事情がある場合には以後の閲覧が継続できないこととなる場合があります」とあり、会員資格のある期間のみ閲覧可能と読める。もちろん退会したり解約したりした場合は購入した電子書籍は見ることが出来なくなる、と読み解ける。

 

まんが王国

こちらの約款は、URL「利用規約 – まんが王国 (k-manga.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。閲覧権のみだが、私的使用に関する権利は認められているので、複製(ファイル保存)は出来そうだ。

第5条(本サービスのご利用・ポイント)の6項において、利用期間に定めがあり『購入=ずっと見れる』ではない点に注目したい。また6項の最後には会員契約の解約に伴い閲覧不可となる旨が記載されている。

ただし、保存に関しては可能とも読める部分がある。第10条(著作権等)の部分には2項で「本サービスの複製、転載、公衆送信…(省略)、またはそのおそれがある行為を一切行ってはならない」として複製を禁止しているものの、3項で「私的使用の範囲を超えて利用することはできない」とあり、私的使用の範囲内であれば複製、保存は可能と読める。会員本人が何らかの手段にて私的使用の範囲の複製(ファイルに保存するなど)し所有することが出来そうだ。問題は、第5条6項の最後の「期間中に無料で再利用できます」が私的使用で複製したものに対して有効か否かの判断となる。この辺りは最終的に裁判等で確定させるしかないだろう。現状は私的使用の範囲に則り保存は可能だろう。

 

Amebaマンガ

こちらの約款は、URL「ガイドライン | Amebaマンガ|お知らせ (dokusho-ojikan.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

第3条にある通り「コンテンツを閲覧、利用する権利を購入またはレンタルすることが出来るサービスです。」との事で、閲覧のみが可能だ。第4条の水色の下線では「会員が保有する端末に保存されるのではなく、当社サーバに保存され」とあり所有権は無いことがわかる。

また、強制退会を含む退会によって購入した閲覧権は消え、再登録後も復旧できない点はなかなかえぐい条項ではないだろうか。Amebaマンガを読んでいる人は注意が必要だろう。

 

dブック

こちらの約款は、URL「dブックご利用規約/メールサービス確認事項|電子書籍[コミック・小説・実用書]なら、ドコモのdブック (dmkt-sp.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

dブックも第11条1項(対象コンテンツ等の利用条件)にある通り「対象コンテンツ等の非独占的かつ譲渡不能の使用権を、サービス契約者に対して有償又は無償で許諾する」となり、所有権は保持できない。また対象がサービス契約者なので、解約すれば使用すらできなくなる。

また、第15条(提供停止等)においては、1項にて通知なしでサービスの停止が可能であり、また4項にはサービスの停止中でも利用金額の支払義務はそのまま継続するとなっており、dブック側にかなり有利な約款となっている。

 

U-NEXT

こちらの約款は、URL「ユーネクスト電子書籍配信サービス利用規約」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

U-NEXTはPDFでサービス利用規約を提供しており、他の会社とは異なる特徴を持つ。今回確認したのは2019年1月29日版だが、第7条5項において「該当購入書籍を閲覧できなくなります」との記載があり、5項の下にある1号から4号で定めた通り退会やサービス停止などで閲覧自体が出来なくなる。

また第11条1項で「当該電子書籍を閲覧することができます」とあり、閲覧のみを許諾している、と読めなくもない。他の権利は認めてもいないし禁止もしていない状態ではあるが、例えばダウンロードファイルを保存した場合、2項の要件で対応デバイスを管理する旨がある為、管理対象外のデバイスでは利用できない、となる為に実質利用不可と解釈すべきだろう。

 

FOD

こちらの約款は、URL「利用規約|フジテレビの人気ドラマ・アニメ・TV番組の動画が見放題<FOD> (fujitv.co.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

FODの場合は動画配信サービスなど多岐なサービスに渡り対応するための利用規約となっているので電子書籍だけを対象としておらず他と違うと思われたが、意外とあっさり書いてある。第11条(本サービスの利用)の1項に「本サービスを利用するための非独占的なライセンスを付与し」「当社指定の配信方式に限定された、非営利目的での、本コンテンツへのアクセス、視聴、及び閲覧が可能」とあり、動画も電子書籍も閲覧や視聴のみが許されていると読める。

また、第10条(大会後の取り扱い)の1項1号にあるとおり「退会日から利用できなくなります」とあるので、退会後は購入した電子書籍(コンテンツ)は見ることが出来ない。

 

ひかりTVブック

こちらの約款は、URL「利用規約 | ひかりTVブック (hikaritv.net)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

ひかりTVブックでは、第10条 本サービスの利用 の項目で「指定する端末等の環境(以下「対応端末」といいます。)に従う事にします」とあり、利用端末を制限している。そのうえで2項で「オンライン上に表示する条件の範囲で利用するものとします」と、表示のみが利用対象となっている。すなわち閲覧のみが可能と読める。そして第8条 解約 の項目では「購入済み、または、ダウンロード済みのコンテンツであっても、利用できなくなるものとします」と解約後は閲覧も不可となる旨、記載がある。

kobo(楽天)

こちらの約款は、URL「楽天Kobo電子書籍ストア: Kobo利用規約 (rakuten.co.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

Koboの利用規約は正直言って分かりにくい。突然未定義の単語(「マテリアル」など)が出てくるなど、素直に読むことが難しい。そんな中で利用規約を読み進めていくと、3.利用の制限 の項目に色々と記載があることがわかる。

Bの項目で「本サービス上の全てのコンテンツ(中略)の権利は、Kobo又はそのライセンサーに全て留保され帰属します。」と利用者には基本権利が無いことが記載されている。その後に「お客様は、本サービスを利用する資格をもち、利用規約に従うことを条件として、本サービス及びサイトコンテンツにアクセスする限定的なライセンスを付与され、(中略)ダウンロード又は複製を行う限定的なライセンスを付与されます」とあり、コンテンツへのアクセス権(接続する権利)とダウンロード、複製が出来る権利が与えられる、となっている。すなわち、コンテンツをダウンロードして使う(閲覧、複製)はOKと読める。

そして、Cの項目では「お客様は、Koboに対して、本サービス上で利用可能にした全てのマテリアルについて、編集、複製、表示、出版及び配信する権利を付与するものとします。」と、マテリアルが何を示すのかが不明だが、紙と同等に権利があると記載している。にもかかわらず、その下(青い下線の個所)では「上記は、Koboに対して、出版社その他のコンテンツプロバイダより本サービスにおける販売を目的として提供される電子コンテンツについては適用されません。」と否定している。一体何が言いたいのか皆目見当がつかない。という感じであり、Koboは正直権利関係が不明瞭であり怖くて触れない、というのが正直な感想だ。どのような状態になってもこの利用規約では「どうとでも取れる」ためだ。

 

マンガ図書館Z

こちらの約款は、URL「利用規約 | 全巻無料で漫画読み放題! – マンガ図書館Z (mangaz.com)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

マンガ図書館Zは他と明らかに違うのはPDFファイルの扱いに関してだろう。他のサービスは専用アプリや特定の端末など利用方法を制限し、その利用方法で閲覧することのみを許諾している。しかしながらマンガ図書館Zはコンテンツ自体をPDF形式で販売している(第3条の2号、5号)事から、その複製、保存はOKとなっている。またPDFであるため特殊なビュアーやアプリが不要であり、退会等をしても閲覧ができなくなるという事が無い。(第27条、第29条)

また、利用規約上はダウンロードしたPDFの利用範囲の記載があり、第三者への譲渡等はNGとなっている。それらは、PDFダウンロード時に個人情報(会員情報)を付与することで抑止している。

 

Renta!

こちらの約款は、URL「Renta! | 著作権について (papy.co.jp)」で確認した。確認日は2022年5月8日となる。

Renta!は著作権についてという部分で記載があり、「お客様が個人的に利用される場合に限り、公衆回線/専用回線を通して著作物をお客様の端末に表示すること、複製保存することが認められております。」と閲覧と複製保存が可能となっている。Renta!の面白い所は電子書籍は公衆送信権の許諾を受けて送信しているのみである点だろう。本説明を読む限りでは日販やトーハンのような立ち位置(配送のみ)を意識しているようだ。また「Renta! | 利用規約 (papy.co.jp)」にある利用規約でも第12条(私的利用の範囲外の利用の禁止)にある通り、私的利用の範囲は許諾されていると読める。Renta!の場合、権利としては通常の紙の書籍と同等のようだ。あとは技術的に制限している可能性(例えば専用ビュアーでないと見れない、専用ビュアーは退会したら使えない、など)はあるものの、約款的には紙の本と同等ではないだろうか。

 

まとめると、紙の本最強!

色々と電子書籍の約款を紐解いてみたが、最終的には「紙の本最強」の一言に尽きるだろう。電子書籍の場合、提供元との契約が必要となり、その際に様々な条件が各社によって謳われている。なんとなく約款を見ていったが非常に分かりにくく、Koboに至っては何を言っているのかすらわからない状況だ。紙の本であれば売買契約(本屋で本を購入)が完了すれば、あとは著作権法に則って私的利用の権利が確定するが、電子書籍の場合は売買契約の対象が利用規約等で縛られており、それが閲覧のみや複製禁止といった条件になる。紙と同じ値段を払って権利制限された書籍を購入することのデメリットをしっかりと認識して利用してほしい。

古い小説も紙なら会員じゃなくても見れる!

特に、「閲覧」の権利を付与(ライセンス)しているケースのKindle、BookLive、eBookJapan、まんが王国、Amebaマンガ、dブック、U-NEXT、FOD、ひかりTVブックは退会などで、購入した電子書籍が見れなくなる為、注意が必要だ。

また、電子書籍の場合は電子書籍の提供会社と契約を交わす必要があるが、その際に反社条項が含まれている。広くあまねく学び機会を与える本という文化において、反社の人間だから本を読むな、と言っているに等しい点もかなりの問題だろう。書店が続々と閉店している中、電子書籍ではなく有体物である紙の本を購入し手元に置くことで、末永く楽しめる。そんな世界を引き継いでいきたい。電子書籍も紙の本も値段は変わらないことが多いので、是非、本という有体物の有用性を見つめなおしてほしい。

有体物はやはり強い!