アニメ『アークナイツ』制作陣の渡邉監督、アニメキャラクターデザインの高藤さんにアニメ版の話を聞いてみた!

2023年10月から放送され、各種配信サービスにて全話配信中のアニメ『アークナイツ』Season2の渡邉祐記監督、そしてアニメキャラクターデザインの高藤彩さんにアニメ制作に関してインタビューを行った。ソーシャルゲームからアニメへ、普段聞けない苦難の連続が垣間見えるインタビューとなった。

 

1時間独占インタビュー!アークナイツアニメ制作の裏話を聞く!

アニメ『アークナイツ』の渡邉監督、そしてアニメキャラクターデザインの高藤さんに直接インタビューを敢行! 進行はライターの黒井(アーミヤ大好き、でもゲーム初心者)が行い、ゲームからアニメへのキャラクターデザイン時の超レアな話などを伺った。もちろん進行特権で大好きなアーミヤについても聞いてみたので、アーミヤ好きは是非読んでいこう! もちろん、当サイト独占でお時間を頂いたので、この話は当サイトのみの限定版! 特にアークナイツを知っているけどゲーム未体験な方や、アニメはまだ未視聴という方もアニメを見て、ゲームを始めるきっかけになるはずだ! それでは1時間にわたるインタビューの様子をお伝えしていこう。

 

[苦労した点やアニメ化する際に気を付けた点]

――アニメのキャラクターデザインで苦労した点はありましたか?

アニメキャラクターデザインの高藤彩さん高藤さん:苦労したところは沢山ありましたが、ソシャゲ原作という事ですごくパーツが多いのと原作のイラストレーターさんの表現をアニメに落とし込むのに苦労しました。特に、服の素材や透明感、布の厚みの質感などをアニメという限られた線画で表現するのが大変でした。

アニメになるとキャラクターが動いたり着ているコートがなびいたりするのですが、原作のイラストからは分からないコートの下の服装や後ろに向いた際のベルトの形状、アクセサリー類などの「イラストからは見えない情報」を補完しアニメのキャラクターとして破綻しないようにするのが難しかったです。また、アーミヤは原作にある3色のハイライトを拾ってアニメでも同じように表現していますが、他のキャラクターも原作のイラストレーターさんの個性(絵柄)を尊重してキャラクターごとにハイライトの形を変えたりして細かく原作のイラストの個性を崩さないようにしました。

渡邉祐記監督渡邉監督:原作のイラストレーターさん毎の描き分けは(高藤さんには)意識して頂きました。アニメの制作の最初のころに高藤さんへ「(原作イラストのテイストを)拾っていこう」と話をしました。

高藤さん:設定デザインはチェックの時に各イラストレータさんに渡るのですが、それぞれのイラストレーターさんの拘りがフィードバックで帰ってくるときに感じられて、そこが面白かったです。

――原作イラストからアニメにするためにキャラクターデザインを落とし込むのが大変だったのが伝わってきました。次の質問ですが、頑張った、または苦労したのでここは是非見てほしいという場所はありますか?

高藤さん:苦労したから見てほしい、ということはありませんが、なるべく原作好きな方々にも喜んでもらえるように再現したので、アニメのキャラクターも喜んでもらえたら嬉しいです。

渡邉監督:高藤さんからも話がありましたが、アニメではハイライトの形が1つ変わるとすごく作業量が増えるので統一することが多いのですが、アークナイツではアーミヤの3色ハイライト等、キャラ毎に異なる処理も多く1期では大変でした。ですが、スタッフも1期から続けての方も多く、だんだん描き慣れてくれて2期ではだいぶ楽になりましたね。

キャラクターデザインに関しては、ハイライトの指定、目の中の描き方や透明な素材の雰囲気など、それぞれのキャラクターの原作イラストの魅力となっている(キーとなる)部分を、なるべくパッと見たときに「あのキャラだ」「あのキャラクターのここが好きだな」と分かるように残してもらいました。

高藤さんには、設定表の中でキャラクターの持つ一つ一つの小物や髪の毛、ポシェットとかすごく細かく描いて頂いています。例えば、ドーベルマンの場合は隠れがちな袖だったり、腰に下げているアイテムだったり。同じように2期だとグレースロートの頭のパーツとか、フロストノヴァの耳のところの輪っかとか、とくに左右非対称なものは、描き忘れとか左右逆に描いてしまうとかミスが出やすいので、そういうのを阻止する為にも設定は細かく描いて頂きました。実際に画面になったときにこの設定が結果として出ていると思うので、しっかり見て頂けたらな、と。

――それでは次の質問ですが、思い入れが強いキャラクターはいますか?

高藤さん:私はWとメフィストですね。感情表現が豊かなキャラクターが好きなのでこの2名です。

渡邉監督:デザイン的にこの二人の印象はありますか?

高藤さん:アークナイツはあまり表情を出さないでくれと言われている事もあって無表情のキャラクターが多い中で、喜怒哀楽を表現してくれるキャラクターなこともあってこの二人を選びました。表情が豊かなので描いていて楽しいな、と。

渡邉監督:私はキャラ萌え的なところが薄く、監督としても全体的にフラットに見ているのですが、メフィストというキャラクターが一番面白いかな、と思っています。副監督の西川さんがコンテを担当した回でしたが、メフィストはアークナイツ内で一番描かれ方に落差があり、最初は上がった状態でその後ドーンと下がるわけです。高藤さんもおっしゃられていましたがデザイン的な観点からも喜怒哀楽の表現が大きく、演出的にもストーリーの流れとしても面白いキャラクターだな、と思っています。

――ありがとうございます。続いてですが私はうさ耳+可愛い女の子のアーミヤに一目惚れしたのですが、アーミヤの印象はどうですか?

高藤さん:ファーストインプレッションはうさ耳で細くて“ちまっとした可愛い女の子だな”と思ったのですが、シナリオを読んで色々知っていく中で、誰より率先して前に立って、傷ついて、それでもこの小さな体で一生懸命前に進んでいるキャラクター性が、ただ可愛いだけではなく人の心に残るキャラクターだと。キャラクターとしてもアーミヤには愛着を持っていて、可愛いのと色々と背負っている姿に心打たれてすごく好きなキャラクターです。

渡邉監督:アーミヤは個人としてと、ロドスの代表として、その軋轢というかズレが最終的に重く圧し掛かってくるキャラクターです。パッと見たときに可愛い一人の少女としての姿と、“我々ロドスはこう行くのです“というカッコいい面を持つすごく複雑なキャラクターですが、背後に大きくて重たいものがある。あるからこそ可愛いのです。可愛いキャラクターはたくさん居ますが、作品の顔としてアーミヤほど複雑に背負っているものと、見た目の小柄な華奢な少女というギャップが大きいキャラクターは珍しいのかな、と。それが、お客さんにとって魅力として映っているのではないか、との気持ちです。

――そうなんですよ、アーミヤ可愛いんですよね。

渡邉監督:ゲームを造る上で要となるキャラクターなので、原作のHypergryphさんもデザイン周りにかなり気合いを入れて作られたんだな、と痕跡を感じ取れるものがありました。

――どうしてもお気に入りになってしまいますね、アーミヤ。

渡邉監督:(ライターに対して)すごくお好きなんですね。アーミヤですが、指輪、首、足にもある輪っかを描くのが本当に大変なんですよ。カットごとに三角の格子の部分は省略する場合もありますが、基本的には描くコスト(手間)が無茶苦茶かかるパーツです。

高藤さん:指輪もそうだし、地味にチェック柄のスカートだし。色々と貼りこみ(※1)もあるし大変ですね。

※1  貼りこみ:撮影時に加工等をして映像にしてもらう作業。張り込み素材はその時に使う素材

渡邉監督:アニメは線の数で重たさ(手間)が変わってくるのですが、アーミヤは無茶苦茶手間をかけて作られていますね。バストアップにすると手間が減るキャラもいますが、アーミヤはどこを切り取ってきても、胸元にロドスのロゴの貼りこみ素材があったり、顔のアップでも首の輪っかが付いてきたり、耳の毛が生えてたり、インカムがあってハイライトが三色あったり、と非常に手間が掛けられた上での可愛さです。大きなコート(ビックシルエット)に華奢な足が出ているところが彼女(アーミヤ)の特徴なので頑張って落とし込みました。

――アークナイツを知らない方へも見てもらいたいポイントはありますか?

高藤さん:原作からアニメに落とし込む際に出来る限りパーツを省略したり、色面の比率を変えない程度に省略しています。例えば、ベルトは全部真っ黒でバックルやいろんな線が入っていますが、アニメでは黒一色のベルトの中の線をちょっと省略してパッと見で原作と乖離が無いように作っています。このようにキャラクターはみんな愛情を込めて頑張って描いたので見てほしいです。
ゲームだとテキスト量が多く理解が難しい部分もあるのですが、アニメではすごく分かりやすくお話が進んでいくのでアークナイツに最初に触れるコンテンツとして入門編に最適だと思います。

渡邉監督:高藤さんの話にも出た入門というのは意識していて、最初の段階では映像作品として「続きはWEBで」を前提としてはいけない、アニメは独立して完結したものにするように意識していましたが、原作の大ボリュームの文章量を映像化する際にどうしても削る必要がありました。2期では1期の倍以上のテキスト量でしたので、お客様に届けられなかった部分は、キャラクターの感情表現や会話など映像や音に変換して圧縮したつもりです。アークナイツというコンテンツを楽しむための一つの燃料としてアニメを使ってもらって、作品の世界観を含め楽しんで貰えると嬉しいです。

――ゲームはかなり文章量が多いなと思っていましたが、キャラクターデザインに関してもアニメにする際にはかなり省略が必要になるんですね。

渡邉監督:本当に情報量が多いんですよ。アークナイツはキャラクターの造形が個性に直結しているので一人一人のデザインコストが大きいんです。スカートのフリルしかり、アーミヤのコートしかり。たとえばフロストノヴァの服もグラデーションを線画では線をピッと書くだけなのですが、撮影処理の段階でグラデーションにしてもらうと撮影セクションで手間が増えたり。すごく大変なんです。

――アニメを見ているとキャラクターの魅力がしっかり出ていると思います。

渡邉監督:我々は原作と付き合ってかれこれ数年になるのでマヒしていて、ゲームの内容しかり本編の内容しかり、知った前提で自分たちの作った作品を見ているので事前情報を知らない人の感覚があまり分からなくて。大丈夫ですかね?

――原作を知らない方も楽しめるアニメになっていると思います。ゲームのSDキャラを含めてどのようにアニメにするんだろうとワクワクしていました。

渡邉監督:ゲームはSDキャラとフル等身があるのですが、よく見るとゲームでもSDキャラはフル等身キャラから落とし込んであるんですよ。高藤さんとも話をしていて、アニメのデザインをする過程でゲーム中のSDに寄せているキャラクターもいて、フル等身のキャラクターのパーツの落とし込みではなくSDの印象を再現するようなこともしていました。

高藤さん:本当に必要なものがSDには詰まっているので、ディティールコントロール的にSDをすごく参考にしていました。

渡邉監督:ゲームを楽しんでいる方の中でもSDキャラは印象が強いと思うので、ステージに配置されているキャラクターの印象を守れていればそのキャラになる、というのを考えていました。

 

[OPEDアーティストの選定に関して]

――アニメに関して苦労されたところが山のように聞けてワクワクしています。話は変わりますが、2期のOPにMYTH&ROIDさんを選定した理由はあるのですか?

渡邉監督:もともと主題歌は企画の最初の段階からReoNaさんで決まっていて、1期のOPと2期のEDは作品の中核として一緒にやってきていたのですが、それ以外のところはどなたを起用しようかと社内で相談していました。

MYTH&ROIDさんの他の作品の楽曲を見てアークナイツに合わせた良い楽曲を作って頂けるのではないか、と副監督の西川さんから提案して頂きました。

原作サイドの方々と相談することもあるのですが、社内のスタッフでこの方に、とお願いすることもあります。1期EDのDoulさんは自分がたまたまネットで見つけて「この人は絶対に合う気がする」と思いお願いしました。2期では副監督一押しだったのがMYTH&ROIDさんでした。

――ストーリーが暗いので、OPEDも暗いと暗くなりすぎるのでどのように選定されたのかが気になって伺いました。

渡邉監督:疾走感という話はしていて、1期の楽曲は本編が暗いことをお客様に示さなければならないこともありああいった形になったのですが、2期は話が動き出すというか複雑な勢力図が絡まってきて、話もどんどん加速していく印象が本編にあったので、副監督からもアップテンポというか疾走感を求める話がでていました。1期と2期ではOPEDの楽曲の印象はガラッと変わっていると思います。

『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』ノンクレジットオープニング / ReoNa 「Alive」

『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』ノンクレジットエンディング / Doul「BE ME」

TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』ノンクレジットオープニング映像 / MYTH & ROID「ACHE in PULSE」

TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』ノンクレジットエンディング映像 ver.α / ReoNa「R.I.P.」

 

[最後に]

高藤さん:ゲームではSDでしか見られない戦う姿を、リアルな等身でちゃんとキャラが動いて戦闘するシーンなどはアニメならではの楽しみ方だと思うので、これから観る方にはそこも楽しんでいただけたらと思います。

 


以上がインタビューのすべてとなる。ゲームからアニメになる際に様々な試行錯誤がされていた事が分かる内容だった。その試行錯誤の結果が作品に反映されているアニメ『アークナイツ』。まだアークナイツという作品に触れていない人も、まずはアニメから、そしてゲームで是非お気に入りのキャラクターを見つけて世界観を堪能してほしい。

 

【作品概要】

■作品名:
・1期:アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】
・2期:アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】
■公式X:@ArknightsStaff
■ゲーム公式サイト:https://arknights.jp/
■アニメ公式サイト:https://arknights-anime.jp/
■配信情報:DMM TVをはじめ各種配信サービスにて配信中