『日本鬼子運営300万円損害賠償裁判の顛末記』日本鬼子運営が裁判で訴えられたらしいので裁判記録を閲覧してきた


センセーショナルなニュースが飛び込んできた。それは「日本鬼子運営が裁判で訴えられていた」というものだ。日本鬼子といえば平成22年(2010年)にインターネットを騒がせたキャラクターで、海外のニュースでも取り上げられた知名度のあるキャラだ。日本鬼子にいったい何があったのか?秋葉原PLUS編集部は詳細を調べるため東京地方裁判所に向かった。

 

日本鬼子運営300万円損害賠償裁判の顛末記

今回、日本鬼子ポータルサイトへ謝罪文が掲載された。突然の謝罪文という事で、その経緯を確認しつつ、和解内容を通じて状況を整理する為に当サイトのライターが直接裁判記録を確認してきたので、その状況を整理してみた。

日本鬼子ポータルサイトの情報から状況を整理

令和4年(2022年)8月1日

日本鬼子ポータルサイトに謝罪文が掲載される。

日本鬼子ポータルサイト記事に「令和2年2月6日に掲載した記事に不適切な記載があった」として謝罪文が掲載される。

この時点では2年以上前の出来事に対して今更謝罪文が出るのも珍しい程度のものだったが、この記事公開後(令和4年8月2日)にTwitter上で「自分が日本鬼子運営メンバーの一人を民事訴訟で訴えたのだ」という内容の書き込みをする人物が現れる。またこの人物は「法廷で無実が証明された」「法廷で非がないことが証明された」等の書き込みをしたことが確認された。

 

令和4年(2022年)8月6日

上記の発言を受けてなのか、日本鬼子ポータルサイト記事に続報として、謝罪文掲載の経緯が掲載される。
【参考】http://hinomotoonikoproject.blog.fc2.com/blog-entry-268.html

この記事にて2022年8月1日の記事は裁判で和解が成立したことで掲載した記事であること、民事訴訟されたが和解なので名誉毀損等の法的な判断はされていないということが掲載された。

 

裁判所の和解を確認する

和解しているとの事だが、和解になった場合は往々にして「和解条項」に「今後はお互いを誹謗中傷しない」「今後はお互いに接触しない」と記載されるケースが多数を占めるようだ。裁判で勝訴、敗訴が未確定なのでお互い相手のことに対して言及しないという形で落ち着くことが多い。

しかしながら今回のケースでは、和解成立後に自分の方が正しかったと主張していると思われる表現、さらには訴えたという人物からは「和解金50万円を得た」とのツイート等もあり、状況を正確に確認する為、今回裁判が行われた裁判記録を確認してみた。

 

裁判記録の閲覧の仕方

裁判記録の閲覧は一定の手続をすれば第三者でも閲覧することができる。民事裁判の閲覧の場合、第三者であっても調査目的で閲覧したい事件番号と原告、被告の本名をフルネームを記入し、150円の印紙を貼って申請書を記録閲覧室に提出することで閲覧が可能。通常ならば事件番号を探すのが大変なのだが、今回の事件はTwitter上で事件番号を知らせている人物がいたので裁判記録の閲覧が容易であった。さっそく東京地方裁判所に裁判記録を確認しにいくことに。

なお、東京地方裁判所の敷地内は一切撮影禁止(門の外からの写真撮影は出来る)。また、入場に際しては保安検査場にて金属探知機によるボディチェックがあり、鞄や手荷物等がある場合は一度別室にて全てチェックされるので、なるべく手ぶらに近い状態で行くのをオススメする。また、裁判の当事者ではないので閲覧申請はできても複写等は認められない。ただし、目視のよる閲覧と筆記でメモを取ることだけが認められるので、記録が必要な場合は筆記用具を持参しよう。

今回は閲覧可能とはいえ処理中の事件であった為、事前に民事12部に閲覧申請の伺いをし閲覧時間を予約しての閲覧となった。

 

300万円の損害賠償訴訟

こうして、正式な手続きを取って裁判記録の閲覧を実施。この裁判記録については三分冊で、40cm以上の厚さの紙の束が届けられた。今回改めて確認して驚いたことは、訴訟の内容が300万円の損害賠償訴訟だったということだ。以下、裁判記録から裁判と事件の経緯を要約する。

裁判と事件の概要

    • 令和元年11月
      とある人物(この裁判の関係者)から鬼子運営の元に原告が過去に様々なトラブルを起こしているという情報提供があった。
    • 令和元年12月14日
      原告がTwitter上で(日本鬼子ワールドのサブキャラクターアカウントを使い)不適切な発言をした。
    • 令和2年2月6日
      鬼子運営はトラブルの情報提供と不適切発言を受け、原告には鬼子運営(日本鬼子ぷろじぇくと)の活動から撤退してもらい、トラブルの詳細については後日発表するという内容の記事(以下、当該記事)を発表
    • 詳しい日時は不明
      この記事を受け、原告は弁護士を通じて当該記事の削除と謝罪文の掲載を鬼子運営に要求。鬼子運営も弁護士を通して原告の弁護士とやり取りを行う。
    • 令和2年7月26日
      鬼子運営が当該記事を削除。訴状に記載された原告の主張によると、鬼子運営の弁護士と原告の弁護士で協議を行った結果、鬼子運営は原告の意向を尊重する形で当該記事の削除を行った。
      ※鬼子運営は記事削除後、日本鬼子ポータルサイトの閲覧者に対する謝罪文を掲載した。
    • 令和2年12月11日
      原告、東京地方裁判所民事部に損害賠償等請求事件として、鬼子運営メンバーであり、当該記事の文責者を被告として提訴。損害賠償額は300万円。また、(既に削除されているが)当該記事に記載されている「K氏」なる人物は自分のことだと特定できるものであり、公共目的もなく真実性のないものなので名誉棄損に当たるとして、(既に謝罪文が掲載されているが)改めて謝罪広告の掲載を求めるというもの。
      既に削除された記事の内容に対して損害賠償を請求するという異例の裁判であった。

原告の主張をより具体的にまとめると、次の通りである。

  • 300万円という金額は(既に削除されているが)当該記事の影響で令和元年11月1日に発売したついなちゃんのボイスロイドの売上が下がった損害と、精神的苦痛の代償
  • 当該記事は既に削除済みだが、削除したということは非を認めたものである
  • 不法行為に基づく損害回復のための措置として謝罪広告の掲載を要求する

【参考】ボイスロイドついなちゃん:https://ah-soft.com/press/voiceroid/tsuina.html

その後、弁論を繰り返すこと13回。その間に原告が提出した証拠資料は甲第1~29号証。被告が提出した証拠資料は乙第1~72号証。当該記事の内容が真実かどうか、被告が情報提供を受けた資料を元に原告と被告の間で主張・答弁が行われるが決着がつかず。(※勝訴、敗訴等の判決が出ていない。名誉毀損であるかどうかの認定もなし)裁判官から和解を勧められ和解となった。

  • 令和4年7月26日
    和解成立。
    和解条項の内容は、

    • 被告は令和4年8月1日から同年10月31日まで被告の管理するウェブサイト(日本鬼子ポータルサイト)に謝罪文を掲載
    • 被告は和解金50万円を支払う
    • 今後、原告と被告は相手方に接触しない
    • 原告と被告は互いに誹謗中傷及びこれに類することをしない
      というものである。

※50万円は和解金(解決金)であり、損害賠償とは異なる

 

裁判の和解はたしかに成立していた!

今回、裁判記録を確認した結果、実際に日本鬼子運営メンバーの一人が被告として300万円の損害賠償訴訟を起こされ、和解が成立していたことを記録より確認することが出来た。そのうえで詳細を確認していく中で、既に相手の求めに応じて原因となる記事が削除されているにもかかわらず、相手を名誉毀損で訴える裁判が成立するのかという興味深い裁判でもあった。しかしながら今回は和解が成立した為、司法判断は下されなかった。

和解、という形での決着はお互いがその内容に対して誠心誠意向き合う事で成立するものであり、和解内容に沿った対応が必要となる。今回の裁判の和解後において、関係人物がTwitter上で裁判に関する言動を繰り返していることもあり、和解という解決策の難しさ、そして、どのような動きから発生する今後の展開は注視していく必要があると思われる。本件を『他山の石』として、読まれた方の何らかのヒントになれば幸いだ。