ツインエンジンのアニメ映画4作品に期待!

東京ビッグサイトにて「AnimeJapan 2024」が開催されました。今回のアニメジャパンは過去最大の出展社110社、ゲスト登壇者500人以上。2024年3月23~24日の二日間での来場者は13万人以上が来場(昨年より32%増)という大盛況で幕を閉じました。アニメジャパン先行販売グッズやステージ上でアニメジャパン初出情報などもあり、これからも国内最大級のアニメイベントとして期待されます。アニメジャパンでのイベントについてお伝えしたい情報は数多くありますが、その中でもツインエンジンさんのステージがとても興味深かったのでみなさんにご紹介します。

 

そもそもツインエンジンとは

ツインエンジンとはアニメプロデュース会社(アニメの企画・プロデュース・版権管理を主な事業とする会社)です。ツインエンジンはアニメ作品の企画の立案し、自社IP(オリジナルタイトル・オリジナルキャラクター)を積極的に開発し、独自の広報宣伝を行っているアニメ会社です。社風からか新しいことにも意欲的で、新型コロナの流行初期に休館する映画館が発生し映画業界に低迷の兆しが見られた頃「企画制作した長編アニメ作品を劇場公開からNetflix(ネットフリックス)での独占配信に切り替える」という新しい試みに踏み切ったりもしていました。

まあそういう会社のビジネス的な方針はさておき、ツインエンジンさんがプロデュースする作品はみな個性があって少し特徴的。版権物をプロデュースする場合でも「ちょっと不思議な作品」とか、「レトロな雰囲気がある作品」、「妖怪ちっくな物が登場する作品」が多い傾向にあり、個人的にも中二病(オタ心)に刺さる作品を量産してくれているすばらしい会社であります。(あと主題歌のセンスが良い)

そのツインエンジンさんでステージ登壇があると聞いて、「早くも『地獄楽』のアニメ2期製作決定かなー?」とも思ったのですが、今回はツインエンジンがプロデュースする「映画作品の監督を三人を呼んでの鼎談(ていだん) 」とのこと。登壇者の名前と作品名を伺ったところ、これは是非紹介せねば!と感じたのでステージ取材に行ってきました!

監督SP対談ステージ

今回、ステージに登壇したのは中村健治 監督(『劇場版モノノ怪 唐傘』)、柴山智隆 監督(『好きでも嫌いなあまのじゃく』)、塚原重義 監督(『クラユカバ』『クラメルカガリ』)の三人で合計4作品! いにしえのオタクからすると「おぉお!?」「ついに!?」という感じなのですが、若いアニメファンの中にはご存じない方もいるかもしれないので、今回はステージ登壇順に監督さんたちと作品を紹介させて頂きます!

 

塚原重義 監督『クラユカバ』『クラメルカガリ』

塚原重義監督といえば「弥栄堂」(いやさかどう)というブランド名で認知している方も多いかもしれません。2000年代初頭、Flashというソフトウェアを活用したWebアニメーションブームが起きました。この頃のアニメ制作は手間がかかり、(個人でアニメーションを制作している人たちもいましたが)個人でひとコマひとコマ絵を描いてアニメーションを仕上げるというのは至難の業でした。そこでとは、Adobe Systems社のWebコンテンツ制作ツール「Adobe Flash」(以下、Flash)が「アニメ制作に使える!」として「FlashでWebアニメを作って公開する」というのがインターネット上でブームとなり、ステキな作品を公開して人気を集める作家さんはFlash職人と呼ばれました。

塚原重義監督もその時代に伝説のFlash職人と呼ばれた作家さんの一人。『甲鉄傳紀』や『ウシガエル』といった独特の世界観やレトロ・ミリタリーテイストなメカデザインで人気を集めた作家さんで、当時はテレビにも作品が取り上げられたりしてました。その後Flashアニメが下火(セキュリティー上の問題もありWebコンテンツとして利用できなくなった)になり、アニメやゲームの会社に転向したFlash職人が多い中、塚原重義監督は個人で定期的に動画作品を発表していたとのことです。

塚原重義監督

今回の『クラユカバ』『クラメルカガリ』の2作品はクラウドファンディングで資金を集めて制作された作品とのことですが、PVを見る限り作画もかなりのクオリティ。また『クラユカバ』はカナダの第27回『ファンタジア国際映画祭』で観客賞・金賞を受賞した作品とのことなので内容面でも期待できそうです。今まで日本国内ではクラウドファンディング支援者しか観ることができなかったのですが、満を持しての劇場公開となりました!

個人的には塚原重義監督デザインの装脚戦車やそれらの発展型メカたちが劇場のスクリーンで動くのを観れるというだけで胸が熱くなります。しかし作画もキレイだし、どこのスタジオが作ったのだろう? と資料を見たら「チーム OneOne」という聞き慣れない制作スタジオ。これも実はスタジオ実態が無く、「Discord」(以下、ディスコード)というテキストとボイスチャットコミュニケーションツールを利用して集まった作家集団なのだそうです。

2023年末時点で日本国内にアニメーションスタジオが811社ありますが、ディスコードをアニメ制作に活用しているスタジオという話はあまり聞きません…。アニメーション映画もテレワークで制作する時代に未来を感じました。

さて、本作は大正浪漫風の架空の世界で繰り広げられる二つのお話。『クラユカバ』は大辻探偵社を営む荘太郎の元に舞い込んできた「集団失踪」事件と黒鐵の装甲列車の物語。『クラメルカガリ』は日々変化する炭砿町で地図屋を営む少女カガリのまわりで起こる「陥没事故」が、やがて街の命運に関わってくるというもの。どちらの作品も街と探索がキーワードになっていて、塚原重義監督の独特な世界観を堪能できそうで楽しめそうです。

また、プロの声優さんたちも参加している作品なので声優ファンも安心して楽しめそうです。しかも『クラメルカガリ』の主人公:カガリ役は佐倉綾音さん。秋葉原PLUSイチオシの声優佐倉綾音さん!なので声優面でもこの映画を推していきたいと思います。また、『クラユカバ』の主人公:荘太郎役は講談師の六代目神田伯山さんですのでこちらの声の演技も期待大です。

『クラユカバ』と『クラメルカガリ』は2024年4月12日(金)ロードショウ!

 

中村健治 監督『劇場版モノノ怪 唐傘』

中村健治監督といえば薬売り、薬売りといえば中村健治監督! 諸事情で公開予定が延びていた『劇場版モノノ怪 唐傘』がついに公開決定です。こちらの作品、元は『怪 〜ayakashi〜』(2006年)というホラーアニメ作品群。日本の古典怪談3作品をクリエーターたちが独自解釈して制作。その中の『化猫』という作品が高く評価され、後にその登場人物である「薬売り」を主人公とし、『モノノ怪』(2007年)という独立作品として1クール(12話)アニメが制作されました。

中村健治監督

『モノノ怪』はストーリーはもとよりキャラクター、色彩美術、世界観が鮮烈な作品で、放映終了後も熱狂的な人気を持つキャラクターとなりました。10年以上も経過してから行われた「ノイタミナ15周年ファン投票」でも1位を獲得し、ファン待望の映画化。その後、諸事情で公開が延びていましたが無事に公開決定となりました!

この作品は近世(江戸時代)を舞台にした作品ですが、『モノノ怪』は浮世絵風な色彩や和紙などを多用した演出が注目される一方で、こういう特殊な色彩の作品は通常のアニメ制作に比べ使えない手法が多い等、制作には難しいところが多かったそう。神谷浩史さんによる劇場版「薬売り」も凜々しい感じでステキ。作画スタッフサンが(いつの間にか)薬売りの細部の指の動きまでこだわって描き直したというのも気になりますが、今作の舞台は大奥。女の情念と欲望が渦巻く特殊な場所で行われる儀式とは? …公開が楽しみです!

『劇場版モノノ怪 唐傘』は2024年7月26日(金)ロードショウ!

 

柴山智隆 監督『好きでも嫌いなあまのじゃく』

アニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』に続く柴山智隆監督作品第2弾!少年少女が主役で、ハートフルで少し不思議な長編アニメーション映画を作っているスタジオコロリド作品です。

前作は妖怪から「猫に変身できる仮面」を手に入れた少女とクラスメイトとの不器用な恋の物語でしたが、今作は鬼の少女と出会った少年の物語。人間の世界に母親を探しに来た鬼の少女「ツムギ」と、頼まれごと断れない高校1年生の八ッ瀬 柊(やつせ・ひいらぎ)。性格が全く違う二人が出会い、一緒に旅に出て夏から冬を駆け抜けるという「ボーイ・ミーツ・ガール」作品です。

スタジオコロリドの映画は小学生・中学生を主人公にした作品が多かったですが、今回の主人公は高校生(と鬼)という設定なのでその点も作品に影響してくるのかもしてません。

柴山智隆監督

それにしても鬼の娘・・・妖怪好きにはとても魅力的な設定です。しかし鬼といってもツノが左の額にしか生えていないというのが気になります。「あまのじゃく」(天邪鬼)といえばツノが1本のひねくれ者な鬼ですが、彼女が「あまのじゃく」なのか、それともなにか別の存在が関わってくるのか…。

『好きでも嫌いなあまのじゃく』は2024年5月24日(金)ロードショウ!

 

どれも個性的な作品で公開が待ち遠しい!

というわけで、ツインエンジンプロデュースの映画三作品と、監督について紹介させていただきました。今回の映画はちょっと不思議な冒険物、ちょっと大人なホラー物、ちょっと旅に出るボーイ・ミーツ・ガール物と、それぞれ個性的な作品が出そろい、春から夏にかけて映画が楽しみです。

どの作品もおもしろそうですが、まずは『クラユカバ』と『クラメルカガリ』が先週の4月12日(金)に公開されています。興味がある方はさっそく映画館に行ってみてはいかがでしょうか?

(C)塚原重義/クラガリ映畫協會(C)ツインエンジン(C)コロリド・ツインエンジン

この記事を書いた人

和泉 宗吾
和泉 宗吾
和泉宗吾@いずみん
千葉県在住の週末都民。フリーライター兼、野生のプロデューサー。美味しいものを求め東奔西走。秋葉原プラスで記事執筆のほか、企画や催事等のお手伝いをさせていただいております。よろしくお願いいたします。