今回はちょっと当サイトの趣旨とは異なるが、面白い取材のお誘いを受けたので訪ねてみた。紹介するのは2025年1月1日から2月16日まで開催の『新春特別展 成田山の美術 新勝寺に集まる古今の書画・工芸』展。1時間では足りない展示内容をちょっとだけ紹介していく。
成田山に関わりのある美術館
成田山新勝寺といえば新年の祈り(初詣)に行く方も多いと思うが、その奥にある成田山書道美術館はご存じだろうか? 所蔵6700(2024年12月時点の蔵書数)を誇る美術館でもある。書がメインと思われる本美術館だが、様々な「成田山」に関する作品が展示されており、成田山書道美術館だけでも所蔵が2024年12月時点で約6700、新勝寺や関連施設が別途所蔵しているものを含めると非公開な蔵書もある為に幾つになるか分からないほど、との事だ。そんな中、美術館自体で約6700もの所蔵を持つ成田山書道美術館は概ね年7回の展示替えを行っており、なかなか見れない所蔵品も多数あるようだ。今回もちょっと珍しい展示がある、というお誘いを受け2025年1月1日から始まった『新春特別展 成田山の美術 新勝寺に集まる古今の書画・工芸』展を取材した。貴重な作品に触れる大切な機会となった。
写真は成田山書道美術館のメインに展示されている紀泰山銘の拓本。石に刻まれた文字を紙に写したもので、このサイズは原寸大。人と比べるとこの圧巻。
これは少ない常設展示という事なので、まずはこのサイズ感に圧倒されてほしい。
新春特別展は新勝寺とのご縁がポイント!
さて、今回の『新春特別展 成田山の美術 新勝寺に集まる古今の書画・工芸』では、新勝寺と深い「縁」でつながった多くの美術品が時代を跨いで展示されている。出品作品としては、成田山新勝寺蔵の源氏物語屏風図、風神雷神図をはじめ、普段見る事が出来ない七条が展示されたりと目を見張るものばかりとなている。今回は学芸員の谷本さんの案内で展示物を見て回った。
今回の推しの展示から紹介していただいた。2階に展示している竹林図(伝 尾形光琳(1658-1716) 成田山新勝寺蔵)、源氏物語図(伝 土佐光成(1646-1710) 成田山新勝寺蔵)、鶴汀図屏風(狩野栄川古信(1696-1731) 成田山新勝寺蔵)の3つの屏風。
竹林図は尾形光琳が描いたと言われているものとなる(作者名の前に「伝」とあるのは「その作者だと言われている」事を示す。)。竹の描画に胡粉(炭酸カルシウムを主体とした顔料)が使われており、少し盛り上がった塗が特徴との事。下の写真でわかるかな?
ポスターにも使われている源氏物語図。こちらは右手に春の図を左手に秋の図を描く春秋図となっている。景色の移り変わりとともに源氏物語の主な10の場面を描いている。こちらは是非美術館で現物を眺めつつ源氏物語のシーンを思い浮かべるとさらに楽しめそうだ。
メインの屏風の3点のうち最後は鶴汀図屏風。水辺で鶴が戯れていて、松があって梅があって竹があって紅白に鶴が遊んでいる縁起物の画題尽くしの屏風で年始にふさわしいものとなっている。鶴汀図屏風は東京の木挽町(現在の東銀座あたり)の狩野家の調度品であったであろう、という話も。
続いては詩書屏風(亀田鵬斎(1752-1826) 成田山新勝寺蔵)。折衷学を推奨していた亀田鵬斎は幕府の寛政異学の禁により弾圧の対象となり、放浪の旅に出た。旅先の越後で出会った良寛(江戸時代後期の曹洞宗の僧侶)に大きく影響を受け、その影響は字にも大きく影響が出ているとの事。字の形に良寛のように丸みを帯びた字形に、江戸の人々は「鵬斎は越後帰りで字がくねり」と口を揃えていった、との事だ。それが良くわかる屏風となっている。
屏風には「蓬莱僧侍群仙宴」から始まる言葉が綴られており、蓬莱という縁起の良い文字からはじまり、仙人たちがなんだか賢い話をしているようだ、という意味との事。良寛の影響を受けた後の軽快な丸みを帯びた文字を楽しみたい。
1階で大きさを感じ、2階から全体を眺める
常設の紀泰山銘だが、学芸員の谷本さんからは「2階のこの間から見たり写真を撮っていただくと全体がきれいに見れます」との案内。確かに奇麗に見れる!
2階の角からはこのように見えるので、この密かな紀泰山銘撮影ポイントで写真を撮りたい。こんな大きな空間で展示をしているのは世界でもこの美術館だけかも、と谷本さん。また、この撮影スポットの付近には狩野一信が描いた不動明王図が展示されている。当時の住職が開眼の字を書いて釈迦堂建立の際にかかった費用を捻出するために描かれたものではないか、とのこと。今でいうクラウドファンディングの返礼品みたいな感じだったようだ。
またこの展示の近くには、空海の生涯を語った絵巻の中に5つの筆を手足と口で加えて壁に書き付けたというエピソードのシーンがあるのだが探せるだろうか? 会場の展示を見る際に探してみてほしい。
成田山の七条(最上の袈裟)
成田山の大法会や晋山式などで僧侶が着用する最上の袈裟を七条(しちじょう)と言い、今回の展示は貫首(かんす・最上位の僧侶の呼び名)しか着れないものが3点展示されている。七条は中央から布を重ねていくように作られている。お釈迦様の教えの中では、人が顧みないようなぼろ布を洗ってつなぎ合わせた袈裟こそが尊い、との教えであったが伝来する中で中国で華美なものとなり日本へ伝わり、日本でさらに現在の七条へと変わっていった、との事だ。
紅地金襴翁面和楽器法螺文七条は、芸者の人たちの信仰団体による寄進されたもの。題材に和楽器が描かれ赤字に金糸を織り込み、さらに絵画的に刺繍を絵画的に表している。
紺地波雲龍文七条は、近年では真言宗の中で尊ばれている後七日御修法などで貫首猊下が着用されている。よく見るとつなぎ目が分かる。1枚の布ではなく幾つもの布を重ね、柄を合わせて作られている。
金屏風と石碑
この奥の拓本と金屏風は実は1対の流れがある。知らずに見流してしまうのは勿体ないのでココでぜひ説明させていただく。
金屏風は春秋山水図と言い、狩野派の末端にあたる橋本雅邦によって描かれた。この春秋山水図は、日本橋の魚河岸の講社によって奉納されている。
この奉納を記念して石碑を建立したとの事。この石碑は実際に見に行くことができる。
石碑の右に書かれている石川照勤は、教育、福祉、文化と現在も続く事業を明治時代に体系化した住職。奉納した春秋山水図に対して大真面目に石碑を作って今も見る事が出来る、というこの一対の流れを思いつつ中々展示されない春秋山水図を眺めて頂ければ成田山をまるっと楽しめるだろう。同じように関連するのが宜煙宜雨図と画仙児玉果亭之傅も同じような関連性があるので是非この機会に見てほしい。
他にも般若心境や螺鈿細工の硯箱などが展示されており、約6700品の所蔵があるので今回しか見れないものも多く存在する。実はこの機会しか見れないものも多い、との事だ。
成田に風神雷神図あり!
今回の展示の中で実は最初に紹介されたのがこの風神雷神図だ。
こちらが成田の風神雷神図。描いたのは狩野派の狩野一信。江戸期に10年以上の歳月をかけて作った現在の釈迦堂に張り込まれていた絵がこの風神雷神図だ。釈迦堂に描かれている絵は狩野一信の下絵になるようだ。
風神雷神の愉快な表情を間近で見ることができる展示となっている。「成田に風神雷神図あり!」とこの先呼ばれるようになるかも?
成田山書道美術館に行くには?
正直展示品は少ないようで解説がすべてにある為、しっかり見ると1時間では足りない。閉館時間が16時なので少なくとも15時までには入館しゆっくりと展示品を堪能したい。さて成田山書道美術館に行くには、成田山新勝寺の右手の表示に従って進んでいこう。
公園の中を抜けて行くのだが、ちょっと迷うこともあるかも? 地図を見つけたらしっかり現在位置を確認していこう。
この龍智の池の先にあるのが成田山書道美術館だ。
そして、最後見逃してしまったのが「蛇」の字を集めた書の展示コーナー。どの漢字が「蛇」なのか、探して今年の干支を楽しんでほしい。
【展示概略】
新春特別展 成田山の美術 新勝寺に集まる古今の書画・工芸
■会期:令和7年1月1日(祝)~2月16日(日)
■休館日:令和7年1月14日、20日、17日、2月3日、10日
■開館時間:9:00~16:00(最終入館は15:30)
※正月三が日は開閉館とも30分延長
■入館料:(カッコ内は団体料金)
・大人:500円(350円)
・高校・大学生:300円(200円)
・中学生以下:無料
※護摩札提示で2名様まで無料
■主催・会場:成田山書道美術館(千葉県成田市成田640)
■交通:JR・京成とも成田駅下車徒歩約25分
■サイト:https://www.naritashodo.jp/
この記事を書いた人
この投稿者の最近の記事
秋葉原イベント情報2025年2月16日【2025年2月22日~24日・2K540で開催!】秋葉原にあの「にゃんたまω」が帰ってくる! 「にゃんたま写真展&にゃんクリエイターズ」猫の日スペシャルが開催決定!
イベント情報2025年2月15日「結束バンド TOUR“We will B”」本日開催! 開催を記念してイラストレーター・中村佑介氏描き下ろし記念イラストを公開!
Fate/Grand Order2025年2月15日『Fate/Grand Order』期間限定イベント「小野小町古今抄~雪消月のキラキラ蓮華~」開幕!期間限定サーヴァント「★5(SSR)小野小町」が新登場!
ナイル大商店2025年2月15日90年代傑作「悪女」スリラー2作【蜘蛛女】【冷たい月を抱く女】がTV版吹替え初収録で初ブルーレイ化決定!!あなたは──どちらの《悪女》に堕とされる!?