サウンドノベルは世界に通用するか? 『かまいたちの夜』英語版を徹底検証


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サウンドノベルのパイオニアとして名高いスパイク・チュンソフト。ノベル(小説)と言うだけあり、きっと日本人にしか分からないのだろうと思いきや、なんと『かまいたちの夜』英語版が既に発売されていた。訳されてもなお面白さは保存されているのか…?原版と比較しながら検証してみた。

グローバル化するヲタの世界

何を隠そう著者は大のチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)好き。サウンドノベルはほとんど潰している。1作目の弟切草、本作のかまいたちの夜、セガサターン版の街〜運命の交差点〜、428〜封鎖された渋谷で〜、忌火起草、9時間9人9の扉…などなど。

経験者ならばご存知の通り、サウンドノベルの魅力はなんといっても「予想不能なマルチエンディング」。自分の選択がゲームのシナリオに影響を与えるという「当事者性」が、SFやホラーといった非現実的な内容にリアリティを与え、プレーヤーはスリルを体感する。

ところで、著者は別記事「ヲターヘル・アナトミア」の序で、オタクは海外ではクールジャパン的に親しまれる概念で、世界で日本のサブカルチャーは愛されているといった事を書いた。

(参考に:ヲターヘル・アナトミア…読んだらヲタに惚れちゃうかも?ヲタ徹底解剖・序

実際、アキバは海外の観光客でもあふれていて、特に土日はレトロゲーム屋だったりすると半分くらい外人で店内は埋め尽くされる。皆、日本語でも大量に買い込む。海外のハードと互換性のないソフトだと、その場で日本のハードを買ってソフトを買うというなかなかアグレッシブにotakuを発揮する外人も少なくない。

そこで著者は疑問に思ったのだ。…チュンソフトのサウンドノベルは、海外ではどのような反応なのだろう。実際に訳されて輸出されているのだろうか。

早速調べてみたところ、日本のゲームの情報も発信している海外のサブカルサイトを見ると、スパイク・チュンソフトのソフトもおもいっきし輸出されていた。

特に最近ホットな製品はどうやら『ダンガンロンパ』らしい。Danganronpaとそのまま呼ばれていたり、Trigger Happy Havoc(ハッピーでめちゃめちゃな引き金)と訳されていたりした。今年の2月11日にアメリカで発売されたばかりらしい。

よくよく調べてみると、先述の『9時間9人9の扉』が、999という愛称やZero Escape(訳「ゼロからの脱出」。ゲームに登場するゼロという人の計画した脱出ゲームがコンセプトだからなのだろう)といった訳称でおもいっきし有名になっていて、それどころかシナリオのクオリティが高く評価されIGNという海外のサブカル情報サイトで賞までもらっていた。

ほほお…日本語独特の表現の壁やニュアンスを越えてちゃんと愛されているのか…。

うむ、でも『かまいたちの夜』は流石に輸出されていないだろう。あれは流石に日本色丸出しだから理解されないのでは…。

そう思っていた矢先、これもまたおもいっきし発売されていたのだ。今年1月24日とはこれまたタイムリーな情報である。

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な…なん…だと…?

海外と日本のソフトやハードは互換性が無いケースが非常に多い。だが流石にスマホならいけるか?

というわけで早速英語版を購入。

「かまいたち」はアイルランドの妖精に化けていた…”Banshee’s last cry”

ちなみに著者はiPhoneなのだが、英語版はアカウントが日本の設定のままだと買えない。地域の設定をアメリカにしたら購入ができた。

しかもラッキーなことに無料ではないか。(ただし、途中から先を読むのに400円の課金が必要となる。)

早速立ち上げてみると…。

見覚えのある画面が。

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おっと。…ペンション「シュプール」がスノーフレーク・インになっている(笑)

そういえば製品のレビューで、「海外受けするように意訳し過ぎだ」と批評をしている海外のユーザーがいた。たしかにそうかもしれない。

名前も透と真理がMaxとGraceに。ここはちょっと動揺してしまった。

原版は

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そうなのだ。背景の建物も少し違っているのだ。

ペンション「シュプール」という設定自体を止めて、架空のペンションを使うことにしたようだ。

おそらく実在するモデルとなったペンション「クヌルプ」が長野県という日本にあるということで、訳に支障が出るからだろう。

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ちなみに画像の通り、英語版は広告がついている。まあ、無料なのでこれは仕方ないだろう。

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屋内の画像も、オリジナルのシュプールの面影はほとんどない。

とはいえ、全く原版と異なっているわけではない。BGMは原版と同じで、訳に支障の出ないところは背景も訳の中身もほぼ同じだ。

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真理が黒髪でなくて金髪になっていたりといった細かい設定はさておき、おおよその文章は原版を忠実に再現して訳されているので、かまいたちの夜が好きで英語を勉強している受験生やビジネスマンなどは、これでネイティブの英語を勉強するのも楽しいかもしれない。

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最初の選択肢もまんま同じ。

ただ、大阪弁や浪花なBGMは流石に理解が難しいと判断したのだろう。大阪の社長の香山さんは、南部訛りのテキサスから来た社長さんになっていたw

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最も印象的だった設定の変化は、かまいたちという妖怪の名前を使わなかったところだ。

英語版の題が Banshee’s last cry(バンシーの最期の叫び)となっているのはこれが理由だった。

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本ゲームでは、バンシーはほとんどオリジナルのかまいたちの言い伝えを再現して説明されているが、調べるとバンシーはアイルランドに伝わる女の妖精で、バンシーの泣き声が聞こえるとその家に死者が出るという言い伝えがあるらしい。バンシー自体を調べても、かまいたちのように人を襲ったり斬ったりするという話はどこにもない。本ゲームではバンシーを突風で人を斬る存在として描写していて、上手いことかまいたちの設定をオリジナルに融合させたようだ。

ヲタよ、誇りを抱け

以上のように、賛否両論はあるかもしれないがこうして日本のゲームは、サウンドノベルというジャンルですら海外で愛されているということが分かった。

言語の壁を越えてでも日本のゲームを楽しみたいという海外のプレーヤーがこれほどまでいるという事実は、純粋にただただ嬉しい限りである。

たしかに日本のゲームは「ストーリー」のクオリティをよく評価される。

もちろんグラフィックスも海外と比べて圧倒的に秀逸なのだが、ストーリーの綿密さや壮大さは、下手なハリウッド映画をも越えているという事実は否めない。

マンガやアニメに関しても、日本が高く評価されるのはそのストーリーの奥深さにあるのだとか。画をいくら真似できても、そのストーリーという思考はなかなか真似し難いプロセスなのだろう。

そう考えると、ストーリーで勝負をかけていくサウンドノベルが、注目されないはずもないわけだ。

著者はヲターヘル・アナトミアで、ヲタにはずば抜けた思考力の高さがあると書いたことがあるが、きっとその能力が、こうして日本のサブカルチャーを育ててきたように思える。

日本にとってヲタの存在は、やはり世界の宝とも言えるのだろう。

クラーク博士が「少年よ、大志を抱け」と若者に言っていたのなら、

これからの時代は『ヲタよ、誇りを抱け』である。

自分の好きなことは、世界への可能性を常に秘めているのだ。どうか自分の生き方や考え方に、自信を持ってほしい。誰がどんなに自分を嘲笑っても。

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オタク文化は世界の宝。

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【アプリ情報】
・タイトル:Banshee’s Last Cry(原題「かまいたちの夜」)
https://itunes.apple.com/us/app/banshees-last-cry/id740139977?mt=8
・発売元:Aksys Games Localization, Inc.
http://www.aksysgames.com
・開発者:株式会社スパイク・チュンソフト
http://www.spike-chunsoft.co.jp

・原作アプリ
http://www.spike-chunsoft.co.jp/ssn-kama/

この記事を書いた人

uyu
uyu
コミュニケーションハッカー。新時代のゲームPHEAlosophy(フィーロソフィー)研究所、AkibaColoursで『日本のサブカルチャーが人の心に与える影響』について日々研究している。あらゆる心理セラピー、自己啓発、コーチングに静かなる反旗を翻す『カラーチャット』というゲームの提供も行っている。普段は秋葉原の神田明神すぐ裏でひっそりと暮らしている。HP→http://akibacolours.main.jp